こんにちは。診療チームです。
前回はコミュニケーションスキルの“NURSE“(感情に対応する)をご紹介しました。今回もコミュニケーションスキルの一つ、“REMAP“をご紹介します!
“REMAP“は「治療のゴールを話し合う」時に使われるスキルとされています。
NURSE同様、頭文字に意味があります^^

R :Reframe   状況の変化を伝える
E :Expect emotion   感情に対応する
M:Map out important values   重要な価値観を掘り下げる
A :Align with the patient and family   価値観に基づいた治療のゴールの確認
P  : Plan     具体的な治療計画を立てる

患者様とACPや今後の方針などのお話をするとき、どのように進めていけば良いのか、道標があるとわかりやすいですね。

では、事例を挙げて考えてみます^^
医師と患者様のご家族とのお話の場面です。患者様は80代男性、病気の影響で意思疎通が難しく、高齢で身体機能の低下もあり、徐々に嚥下機能が低下しています。「最近食事の飲み込みが悪くなってきた、今後どのようになっていくのか・・・」というご家族の不安の言葉がありました。

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家「この人は今後どんなふうになるんでしょうか。どうやったら元のように食べられるようになりますか?」

医「食事が食べられなくなってきて、さぞご心配のことと思います。
今後の経過について考えられることをお話しますね。今後、体調の波はあるかもしれませんが、食べることも含めて身体の機能は衰えていくことが自然の経過と考えています。歩行や起き上がりも難しくなる日も来るでしょう(=R:状況の変化を伝える)。そのような日が来たとき、過ごす場所や治療をどうするかなど今のうちから考えておいてもいいかもしれません。」

家「あぁ・・・考えたことがなかったです。主人がどうするのがいいのか・・・どうしたらよいのでしょうか。」

医「急なお話で驚かれましたよね。どうすれば良いのか迷われるのは当然だと思います(=E:感情に対応する)。こういった時、多少しんどい治療でも少しでも長生きできるようにして欲しいというタイプの方もいますし、長生きするよりもとにかく苦痛やしんどさがない方がいいというタイプの方もいます。ご主人、お元気な頃はどのような方でしたか?良ければ聞かせていただけますか?(=M:重要な価値観を掘り下げる)

家「主人は真面目で・・・・(人となりをお話してくださる)。病院にはあまりかかったことがない、元気な人でした。痛いことや苦しいことはきっと嫌だと思います。」

医「お話を聞かせていただきありがとうございます。長生きを大事にするならば例えば"胃瘻"といってお腹に穴をあけてチューブを通し、そこから栄養をとって過ごすようにすることもできますし、しんどさや苦痛、負担がないことが大事であれば、食べられるものを食べながら自然な形でみていくということも選択肢です。今後どのようにしていくのが良いのか、今決めなければならないということはありません。ご主人や奥様のお気持ちや介護の負担を合わせて考えてみるのが良いと思います。ケアマネージャーさんやヘルパーさんなど、皆さんでご主人と奥様のサポートをさせていただきます。みんなで一緒に考えていきましょう。」

家「はい、助けてもらいながらですね。ありがとうございます。また相談させてください。」
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このような対話からA:価値観に基づいた治療のゴールを確認していき、P:具体的な治療計画へ結びつけていくようにします。今回の事例のように今後過ごす場所やどうしていきたいかなどのACPのときにも使えますね^^
一番大切だと言われているのが、REMAPの「M:Map out important values   重要な価値観を掘り下げる」とされています。
ご本人の過去の経験(医療や介護、看取りの経験)や今の思い→なぜそう思うのか?など、患者様の「人となり」を知ることですね。
事例のように、ご家族にお話を聞く場合は「どんな方ですか」「今の状況をみて、ご本人ならどう言われるでしょうか」など、問いかけ、”本人について考えてもらう時間や過程”が大切なのだと思います。

患者様ご本人やご家族の希望や思いができるだけ形にできるよう、医療者として一緒に考えていく姿勢を今後も大切にしたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
ひのでクリニック