在宅緩和ケアの実際 〜がんではない難病「肺線維症」の患者様と歩んだ最期の10日間〜
こんにちは、ひのでクリニックの看護師です。
「緩和ケアは、がん患者様のためだけのもの」と思われがちですが、実は呼吸器の難病などを抱え、息苦しさに悩む方にとっても、家で過ごすための大切な支えとなります。
先日、当クリニックでお看取りさせていただいたある患者様との歩みをご紹介します。
1. 「家で過ごしたい、でも一人は不安」という揺れる心
患者様は、肺が硬くなっていく難病(肺線維症)を抱えておられました。病院での治療を経て、住み慣れた家へ。私たちはまず、ご本人の「最期までどう生きたいか」という意思(ACP)を確認することから始めました。
- 延命は望まない。でも、苦しいのは嫌だ。
- 口から飲めなくなったら、自然に任せたい。
- でも、一人でいる時に苦しくなったら……その時は入院したい。
この「揺れる心」を丸ごと受け止めることを在宅緩和ケアでは大切にしています。
2. 「苦痛」を科学的に取り除く
呼吸器疾患の終末期には、激しい「息苦しさ」が伴います。当院では、医療用麻薬(モルヒネ)の持続皮下注(CSCI)を導入しました。
- 精密な調整: 24時間持続的にお薬を投与するポンプを使用し、意識を曇らせることなく「呼吸の質」を整えます。
- 24時間のバックアップ: 「もしも」の時に備え、ご本人やご家族がボタン一つで追加のお薬(ボーラス)を投与できる体制(PCAポンプ)を整えました。
血液データ上の数値(CRPや酸素濃度)だけを見るのではなく、ご本人の表情が穏やかであるか、その「一点」に集中して調整を続けました。
3. 「生活」の不自由を一つずつ解消する
- 環境の調整:トイレに動くだけでも、会話をするだけでも息が上がるようになってしまった患者様。まずは部屋の掃除、そして地域包括支援センターによる介護申請、ケアマネジャーと福祉用具業者とともに介護ベッド導入、ご家族への連絡調整・・・少しでも快適に安心安全に過ごせる環境を多職種で整えました。
- 「食べる」を諦めない: 以前から配食弁当利用のご希望があり管理栄養士の支援でお試しを始めた矢先、飲み込みが難しくなってきました。飲み込みの状態変化のサインを見逃さず、すぐにトロミ付きの飲料やゼリーを提案。モルヒネの持続皮下注射を開始してからは、呼吸苦の訴えもぐっと減り、ミニトマトを美味しそうに食べておられました。
- 不安への即応: 排泄の不安に対し、訪問看護ステーションと訪問介護が1日に数回介入する計画を立ていただきました。訪問看護ステーションスタッフさんの「何かあればすぐに呼んでください」という声掛けにより孤独感が解消していきました。退院当初は、介護ベッドや訪問看護・介護などの導入に対して拒否的でしたが、「家に帰ってきて良かった。」「寂しいけど、みんな来てくれるから。待ってる。」「本当にありがたい、皆さんとてもよくしてくれる。」「立派な仕事だね。」などの言葉をたびたび口にされていました。
4. 地域が「一つのチーム」になる瞬間
在宅緩和ケアは、当クリニックだけでなく、多くの専門家の連携で成り立っています。
- 基幹病院: 的確な診断とスムーズな在宅へのバトンタッチ。
- ケアマネジャー:地域包括支援センターからスムーズな移行、スピーディーな対応。多職種との連絡調整。ご家族の支援。
- 訪問看護: 当院の看護師訪問→訪問看護ステーションへのシームレスな引き継ぎと看看連携。ステーションへの移行後は、生活の細かな変化をキャッチし精神的な支えとしても即座に対応・情報共有してくださいました。
- 福祉用具業者:依頼したその日に部屋の片付けとともに介護ベッド導入。
- 訪問介護:訪問看護と協力し日常の生活の支援と見守り。
- 訪問薬剤師: 特殊な麻薬製剤を迅速に準備・管理。
在宅緩和ケアが目指すもの
亡くなる数日前、1分間に48回という速い呼吸の中でも、患者様は「しんどくない」と穏やかにおっしゃっていました。それは、医療とケアが生活の不安を取り除けた結果かもしれません。
「病気」を診るのではなく、その人の「人生」を診る。
私たちはこれからも、地域一丸となって、患者様の「家で過ごしたい」という願いに寄り添い続けます。
当院で対応可能な医療的ケア一覧
・痛みのコントロール
・痛み以外の苦痛症状を含めた症状コントロール
・持続麻薬皮下注射
・在宅酸素
・膀胱留置カテーテル
・中心静脈輸液管理
・腹腔穿刺
・24時間往診
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