ワクチンで感染症を予防しよう ~高齢者の肺炎球菌ワクチン~
肺炎は日本の死亡原因の第5位であり、成人の肺炎の約2~3割が「肺炎球菌」という細菌によって引き起こされるといわれています。
とくに免疫力が低下しがちな高齢者では、肺炎球菌が原因となって気管支炎や肺炎、敗血症などの重い合併症を起こすことがあります。
今回は「肺炎球菌ワクチンの案内が届いたけれど、打ったほうがいいの?」と疑問をお持ちの方へ、肺炎球菌ワクチンの効果や定期接種のポイントについてお伝えします。
【肺炎球菌ワクチンの効果】
肺炎球菌には約90種類以上の型があります。
それぞれの型は異なる性質をもつため、1つのワクチンですべての肺炎球菌に効果をもたらすのは難しいのが現状です。
肺炎球菌ワクチンの定期接種で使用される「ニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)」は、23種類の型に効果があるとされています。
この23種類の型は侵襲性肺炎球菌感染症(※)における原因の約4~5割を占めているといわれており「ニューモバックスNP」はこの感染症を約4割予防する効果があるとされています。
※侵襲性感染症:血液や髄液、関節液など本来は菌が存在しない場所から菌が検出される感染症
【定期接種の対象者】
次の条件に当てはまる方が定期接種の対象となります。
①接種時に65歳の方
②60~64歳で対象となる方
・心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される
・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)により免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能上記の状態で身体障害者手帳1級相当の障害を有する方
※過去に「ニューモバックスNP」を接種したことがある方は定期接種の対象とはならず、任意接種となります。
【接種回数】
定期接種の対象となるのは対象者①②を通して生涯で1回のみです。
とくに「①65歳の方」は定期接種の機会は65歳の1年間(66歳の誕生日の前日まで)です。対象の方で希望する場合は、接種の機会を逃さないようにご注意ください。
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ここまで、肺炎球菌ワクチンの効果や定期接種についてお伝えしましたが「肺炎球菌ワクチンは1回だけ受けたらいいの?」「65歳を過ぎたら受けられないの?」という疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
【接種は1回だけでいいの?】
定期接種で使用する「ニューモバックスNP」の効果は約5年といわれています。
そのため、日本感染症学会では、定期接種後も約5年ごとに任意でのワクチン接種を推奨しています。
なお、肺炎球菌ワクチンには「ニューモバックスNP」以外にも種類があります。再接種を検討される場合は、医師と相談しながら進めましょう。
【65歳を過ぎたら接種できないの?】
65歳を過ぎている方でも、肺炎球菌ワクチンを一度も接種していない場合は、任意で接種することが可能です。
費用の公費負担はありませんが、肺炎球菌予防のために接種を検討してみてください。
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当院でも、肺炎球菌ワクチンの定期接種や任意接種に対応しております。
肺炎球菌ワクチンの接種に関することで不明な点は、お気軽にご相談ください。
参考サイト
・高齢者の肺炎球菌ワクチン|厚生労働省
・高齢者肺炎球菌ワクチンの定期接種について|広島市
・65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第6版2024年9月6日)|日本感染症学会