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このたびは『心筋梗塞後EFが保たれた患者へのβ遮断薬使用』について以下の論文が発表されましたので、在宅医療でも今後参考となりそうなので、とりあげさせていただいます。

Yndigegn T, Lindahl B, Mars K, et al; REDUCE-AMI Investigators. Beta-blockers after myocardial infarction and preserved ejection fraction.

N Engl J Med. 2024;390:1372-1381.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38587241/

心筋梗塞(MI)後の治療において、β遮断薬は長らく標準治療とされてきましたが、β遮断薬使用の根拠となっていたデータは、現代の治療法である経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、強力な抗血栓療法、スタチン療法が普及する前のエビデンスに基づいていたため、近年の研究によりその必要性が再評価されています。

最近の研究では、正常な左室駆出率(pLVEF)を持つ心筋梗塞患者において、β遮断薬の効果が限られていることが示唆されました。Yndigegnらによる大規模なランダム化比較試験(RCT)「REDUCE-AMI」では、β遮断薬を使用した群と使用しなかった群で、全死亡率や再発心筋梗塞の発生率に有意な差が見られませんでした(7.9% vs 8.3%; ハザード比, 0.96; 95% confidence interval, 0.79 to 1.16; P=0.64)。この研究では、ST上昇心筋梗塞(STEMI)患者は35%、約半数が単一血管病変を持つ患者で、96%がPCIを受けていました。 注意点として、再血行再建を受けていない患者にはこの結果が適用されない可能性があります。また、オープンラベルデザインやグループ間のクロスオーバー、フォローアップ期間など、試験の限界も指摘されています。

しかし、この研究から従来の治療法を見直し、薬物有害事象のリスクを減らし、効果の期待できる治療に絞ることができる可能性があります。特に、高齢患者においては多剤併用(ポリファーマシー)のリスクが増大しており、潜在的にリスクがある薬剤を減らすことが検討されます。MI後に血行再建術を受け、EFが保たれている患者では、例えば徐脈や立ちくらみなどのリスクがある場合、服薬負担をなんとか軽減したい場合などにはβ遮断薬の使用を終了することも選択肢になりそうです。

 

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