ACPを深めよう 〜臨床倫理の4分割法〜

こんにちは!診療チームです。
今回は先日のACP勉強会での学びの1つ、臨床倫理の4分割法についてお伝えします。

患者様のACPを考えるときに、特に不確実性が高い場合や倫理的対立が生じる場合に用いる「臨床倫理の4分割法」というフレームワークがあります。

内容としては、
◎医学的適応:医学的問題(急性?慢性?緊急性?終末期?など)や治療の目標など
◎患者の意向:十分な説明を受けている?意思決定の判断能力は?など
◎QOL:治療をした場合/しなかった場合どうなる?苦痛の度合いなど
◎周囲の状況:家族の意向や経済的問題、宗教的側面など
患者様の情報を4つの側面から挙げ、多角的に患者様のACPを考えていきます。

ここで、事例を通して考えてみましょう*
90代男性、トッピックスとしては今後の療養場所についてです。

◎医学的適応(医学的問題)
・90代男性 脳梗塞後遺症で右上下肢麻痺あり
・要介護2
・誤嚥性肺炎を繰り返している
・年齢相応の認知機能低下あり

◎患者の意向
・できるだけ自宅で過ごしたいが、娘や孫には迷惑をかけたくない
・今はなんとか1人でやれているが今後は不安もある

◎QOL
・できるだけ自分でできることは自分でしたい
・お酒が好き 飲めるなら飲みたい
・食べることも好き
・脳梗塞発症前は地域のラジオ体操参加や毎朝ウォーキングをしていた
→「できるなら今後も続けていきたい」

◎周囲の状況
・妻他界後、独居
・近隣に娘や孫が在住 時々支援しているが就労あり毎日訪問は不可
・娘と孫「度々来れるわけではないので、心配」
・ご近所付き合い時々あり

上記のように4つの視点から情報収集し、多角的に考えていきます。
この事例の場合、男性は自宅で過ごされており医療的な介入は現在ありません。ご本人のQOLを考えると自由や自律を大切にしたいところです。しかしこの先身体や認知機能低下が予測され、療養場所を決めていくのに、本人の意向と家族のサポートや心配の間に課題がありそうです。
医療職として、本人やご家族を一緒に考えながら、対応を考えていくことが大事ですね。
時には生命に関わる時にACPを考えることもあります。そのような場合にも、1つの側面からではなく多角的に、多職種で情報共有し考えていきます。
患者様やご家族の未来につながることを一緒に考えさせてもらう重要な役割を担っているのだと、改めて身の引き締まる思いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!
ひのでクリニック