「〇〇さん、最近、この薬が飲みづらそうなんです」
そんな薬剤師さんからのひとことが、患者さまの生活をぐっと楽にすることがあります。

訪問診療では、医師がご自宅にうかがい、診察やお薬の処方をおこないます。ただ、お薬は「処方する」だけではなく、「飲み続けられる」ことが大切です。
そのために欠かせないのが、薬剤師さん(薬局)との連携です。

今回は、在宅医療の現場で、どのように薬剤師さんと連携しているのかをご紹介します。

【「薬を届ける」だけじゃない、薬剤師さんの役割】

在宅医療における訪問薬剤に対応している薬局では、薬剤師さんが患者さまのご自宅を訪問し、お薬をお渡しするだけでなく、以下のようなサポートもおこなっています。

☆ 飲み方・飲み合わせの確認
☆副作用や体調変化のチェック
☆ 飲み忘れ・残薬の確認
☆錠剤→粉薬など、剤形の変更の相談

とくに、高齢の方や複数のお薬を服用している方にとって、「どう飲んだらいいか」がわからずに困ってしまうことは少なくありません。
薬剤師さんが定期的に関わることで、お薬を無理なく続けられるようサポートできます。

【「飲めていないかも…」に気づいてくれる薬剤師さん】

たとえば、ご家族が「ちゃんと飲んでいると思っていた」お薬。
実は、飲みづらさや体調不良のせいで、本人がこっそり飲んでいなかった…ということもあります。

そんなとき、薬剤師さんが訪問を通して「前回渡した薬がまだ残っている」「飲み方が間違っていた」と気づき、医師に報告してくれることがあります。

医師はその情報をもとに、処方を見直したり、飲み方を変更したりして、無理なくお薬を続けられるように調整することが可能です。

また、「大きな錠剤が飲みにくい」「むせてしまう」・・・そんな声があれば、薬剤師さんから医師へ「粉薬に変更できませんか?」という提案が届くこともあります。実は、同じ成分でも形(剤形)を変えることができる薬があるのです。
そして、複数の薬を1袋にまとめて飲みやすくする「一包化(いっぽうか)」も、薬剤師さんがおこなってくれる大切な工夫です。

患者さんの「飲みづらい」「わからない」という小さなサインを見逃さず、医師と薬剤師が一緒に考えて調整していくことで、お薬がより安全に使えるようになります。

【訪問診療と薬局のやりとりの実際】

薬剤師さんは、訪問した際に得た情報を記録し、必要があればすぐに医師へ連絡してくれます。
たとえば、次のような内容で報告があります。

☆体調の変化(例:ふらつき、むくみ、便秘など)
☆飲み残しの量や頻度
☆お薬が効きすぎている、効いていないサイン

このような内容は、薬剤師さんの視点だからこそ気づけることも多いです。
医師はそれらの報告をもとに、薬の量を減らしたり、別の薬に切り替えたりと、柔軟に対応することができます。

在宅医療では「処方して終わり」ではなく、「使い続けられるか」「生活のなかで無理なく使えるか」がとても大切です。
当院では、薬剤師さんと連携しながら、患者さま一人ひとりに合わせたお薬の使い方を考えています。
それぞれの専門性を活かし、患者さまやご家族が安心できる療養生活を、一緒にサポートいたします!

*「もっと知りたい訪問診療~多職種連携って?~訪問看護編~」もぜひご覧ください!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ひのでクリニック