「先生、ちょっと気になることがあって…」

訪問看護師さんからのこんな一言が、患者さまの命を守ることにつながるケースがあります。

訪問診療では、医師がご自宅にうかがって診察や治療をおこないます。ですが、医師が訪問するのは基本的に月に1~2回ほど。限られた時間のなかで患者さまの体調のすべてを把握するのは、なかなか難しいものです。

そんなとき、頼りになるのが訪問看護師さん。
患者さまのそばにいる時間が長い訪問看護師さんと医師が連携することで、安心・安全な在宅療養が支えられています。

今回は、訪問診療と訪問看護の連携について、実際にどんなやりとりがおこなわれているのか、ご紹介します^^

【訪問看護と訪問診療、どうちがう?】

「訪問診療」と「訪問看護」、言葉が似ていますが、それぞれ違う役割があります。

⭐︎訪問診療:医師が定期的にご自宅を訪問し、診察やお薬の処方、必要な医療的判断をおこなう
⭐︎訪問看護:看護師がご自宅に伺い、バイタルチェック(血圧・体温など)や医療的な処置、日常のケアなどをおこなう

訪問看護師さんは、医師よりも頻繁に患者さまのもとを訪れることが多く、週1〜複数回訪問するケースもあります。

そのため、患者さまの日々の小さな変化に気づくことができるのが訪問看護師さんの強み。
医師は専門的な判断を行い、看護師さんは生活によりそった視点で患者さまを見守る。
それぞれの視点が合わさることで、在宅医療の安心感が高められるのです。

【「いつもと様子がちがう」に気づける、訪問看護師さんの存在】

「顔色がいつもより優れない」「ごはんの量が減ってきたみたい」
こんな小さな変化にいち早く気づくのが、訪問看護師さんです。

たとえば、訪問看護師さんが患者さんの呼吸の変化に気づき「少し息苦しそうです」と医師に連絡。医師がすぐに往診をして診察した結果、肺炎の早期発見につながった、というようなケースもあります。

また、本人が「大丈夫」と言っていても、訪問看護師さんの視点で「ちょっと違うかも」と感じることも。そんな“気づき”が医師に共有されることで、早めの対応ができるのです。

【夜間や休日も、連携で支える安心】

「夜に急に息苦しさを訴えた」「休日に熱が出た」
そんなとき、訪問看護師さんが最初にかけつけ、状況を確認して医師に連絡をとることがあります。

患者さまの状態を正確に伝えることで、医師がスムーズに必要な判断ができます。
24時間体制で患者さまを支える訪問診療にとって、訪問看護師さんとの連携は欠かせないものなのです。

【ご家族の心の支えにも】

訪問看護師さんは、患者さまだけでなく、ご家族にとっても心強い存在です。

「医師にはちょっと聞きづらい…」ということも、訪問看護師さんには話しやすいというご家族は多くいらっしゃいます。
たとえば「最近、夜に咳が増えていて心配なんです」といったご家族の声が、訪問看護師さんを通じて医師に伝わることも。

ご本人と医師、ご家族の間をつなぐ“橋渡し役”として、訪問看護師さんがそばにいてくれる安心感はとても大きいものです。

【チームで支える「その人らしい暮らし」】

在宅医療は、医師だけで成り立つものではありません。
訪問看護師さんをはじめ、薬剤師さんやケアマネジャーさん、リハビリのスタッフなど、たくさんの専門職が関わる“チーム”で成り立っています。

中でも訪問看護師さんは、患者さまのそばにもっとも近く、医師と日々やりとりを重ねながら支えてくれる大切なパートナーです。

当院でも、訪問看護師さんとのこまめな情報共有を大切にしています。
その連携があるからこそ、患者さんの「家で過ごしたい」という想いを、医療の面からもしっかり支えることができるのです。

次回は「多職種連携って?〜薬剤師編〜」をご紹介します!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ひのでクリニック